『勝五郎再生記聞』と産土神

平田篤胤は、生まれ変わりに強い関心を抱いていました。
多摩郡程久保村(現・日野市程久保)の藤蔵から、同郡中野村(現・八王子市東中野)の勝五郎へと再生したという話を篤胤は知りました。そして、勝五郎やその父源蔵から詳しく聞き取り調査を行い、文政6年(1823)に『勝五郎再生記聞』にまとめました。

この著書の大きな特徴は、藤蔵から勝五郎へと生まれ変わりに導いた存在を「産土神」としていることです。さらに、同書の最後の個所では、勝五郎一件以外の「産土の神の事」の例をいくつか紹介し、産土神の御神徳を強調しているのです。このように、『勝五郎再生記聞』は産土信仰の大切さを説くことに大きな狙いがあったと見られます。

平成30年5月20日、藤蔵の墓がある高幡不動尊(日野市)に「藤蔵・勝五郎生まれ変わりゆかりの地記念碑」が建立され、除幕式が行われました。この再生譚は、地元で大切に伝承されているのです。

千葉県文書館嘱託
中川和明